2008-01-01から1年間の記事一覧

会社は赤字でも潰れない:MBA経営との決別

大学で授業を持つ時学生や起業を目指す社会人に対して、「会社は赤字でも潰れない」ということを強調するようにしている。「会社は赤字でも潰れない」と言うと、ほとんどのヒトたちが一様に怪訝な顔をする。会社経営に土地勘がないからであろう。赤字でも会…

大トヨタの凋落:輸出依存型経済の終焉

トヨタの2009年3月期連結営業損益は1500億円の赤字になるということだ。これは戦後初のことである。こうした赤字の予想に対してトヨタの幹部連は「想像を超えた急降下」と口を揃える。確かにそうであるかもしれない。だが幹部がそう口を揃えたとしても彼らの…

痴話喧嘩している場合ですか?:日経・CSISセミナーから考えたこと

昨日(18日)は帝国ホテルで行なわれた、第5回日経・CSIS共催シンポジウム『米新政権と日米同盟の課題』を聴講した。講演者・パネリストはJ.J.ハムレさん(米戦略国際問題研究所"CSIS"所長兼CEO、元米国防副長官)、J.ナイさん(米ハーバード大学教授、米CSI…

リストラの嵐:経営を放棄した経営者に告ぐ

リストラの嵐である。リストラは"restructuring"の短縮形である。だが従来からその実態は人減らしが主体で構造変革とはほど遠い。そのためそうした軽薄なリストラと峻別するために、一時期"re-engineering"なる言葉が用いられたこともあったが、今は死語であ…

ホンダのF1撤退:もの作り原点の大転換!

ホンダがF1からの撤退を宣言した。過去にも二度F1への参戦を止めたことがあるが、それらは飽くまでも「休止」であり撤退ではなかった。いずれにしても、ホンダはその草創期からモーター・スポーツとは切っても切れない会社であった。ホンダは1946年の創立で…

金利引下げで日本型デフレの懸念

12月4日付のフジサンケイ・ビジネスアイ紙に、「日本型デフレ引き起こす−地区連銀総裁、利下げを牽制」という注目すべき記事が掲載された。これは米セントルイス連銀のブラード総裁の発言をベースに書かれたものである。 同総裁は「過去10年間の日本の物価が…

ちょっと待って! IBMさん

日本IBMが1000人規模で正社員の削減を図るということである。これまでリストラ対象となって来たのは主に季節従業員などの非正社員であった。こうした中でここに来てリストラ対象が正規社員にまで広がりつつあることは、実に由々しい問題である。 ところで…

恐慌・戦争はカタルシス作用!

米政府が金融システム保護のために公約している対策費総額は7兆7000億ドル(770兆円:100円換算)と震えが来るほどの巨額に上る。米国GDP13兆ドルの過半を占め、わが国GDP500兆円の1.5倍以上の規模である。公的資金と言えば聞こえはよいが、全て国民への付回し…

麻生さん!

週刊朝日の今週号によると、有名になった「踏襲=ふしゅう」に限らず、「頻繁=はんざつ」「詳細=ようさい」「未曾有=みぞゆう」「有無=ゆうむ」など、麻生さんの漢字の読み違いは数多とのことである。これらは中学までにきっちり学べば絶対に間違わない…

必要な政策の機軸:ハンガリーの金利引き上げに啓発されて

世界金融危機のさなか金利引下げが定番メニューであるにも拘らず、ハンガリー中央銀行は10月22日政策金利を8.5%から11.5%へ3%引き上げた。これはフォリント(ハンガリー通貨)下落への対応のために採られた措置ということである。金利引き上げは通常景気…

低金利政策のつけ:失われた個人消費から考えること

世界金融危機への対応策として、各国政府はありとあらゆる政策を動員し、なりふり構わない対応策をとろうとしている。金融政策も思い切った対応が図られ、主要国の金利は軒並み限りなくゼロに近い水準に向かい始めている。一旦底打ちしたかに見えたわが国の…

一つの会社のあり方:野老真理子さんに学ぶ

先週の土曜日は、房総九十九里で不動産管理を中心とした事業を営む大里綜合管理株式会社社長の野老(ところ)真理子さんの話を聞き、会社の一つのあり方を考えた。 野老さんの会社は典型的な中小企業である。だがこの会社は一風も二風も、他の中小企業とは行…

朝日新聞の世論調査に思う:「給付金不要」は国民の覚悟

11日付朝日新聞のトップに、”給付金「不要な政策」63%”の見出しが掲げられていた。これは同紙の世論調査(11月8・9日)の結果であり、併せて内閣支持率が37%と前回調査(10月25・26日)から低下し、不支持率の41%を下回ったことも示されていた。 定額給付…

オバマさんの勝利に思う:始まったアンダードッグの時代

昨日の米大統領選では下馬評どおり、バラック・オバマさんが圧勝した。オバマさんの名前を聞く時、私の頭の中には必ず一人の人物が思い浮ぶ。その人物とは、英ヴァージン・グループ総帥のリチャード・ブランソンさんその人である。 私の中でオバマさんとブラ…

グローバル・スタンダードを考える:イコール・フッティングの罪

かって米国との間で貿易や金融に関して摩擦が生じるたびに、必ずイコール・フッティングということが言われた。達観すればイコール・フッティングというのは、不公平感を払拭するために兎にも角にも「競争条件を同じにせよ」という主張である。 イコール・フ…

米信用市場の損失額は最低でも1兆ドル?

今年の3月に米国で発行され一躍ベストセラーとなったC・R・モリス『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』によれば、今般の金融危機における米国信用市場の損失額(デフォルト損失と評価損の合計)は1兆1百万ドルに上るということである。モリスさんは、…

BISの自己資本比率規制を撤廃せよ!

今なりふり構わず金融制度の足枷と懸念されるものの見直しが進められている。時価会計、空売りを始めとして、銀行の自己資本にも見直しが入るという。これは私が一貫して主張して来たように、「制度恐慌」の回避手段として正しい対策であり、歓迎すべきもの…

金融危機を恐慌に繋げないために:米国篇

ご案内のように、J・K・ガルブレイス『大暴落1929(1997年版)』では、株価暴落が大恐慌に繋がった原因が追求されている。株価が暴落しても直接的には景気への関係はないはずであるのに、「株価暴落→大恐慌」という図式がなぜ成立したのかということである…

心理恐慌:マスコミの責任を問う

今朝(10月28日)の読売新聞朝刊の38面に、「株暴落:町工場”廃業の恐怖” OLら外貨両替に列」という見出しが踊っていた。中身を見ると、ほとんど全てが円高の景気への懸念である。株暴落というタイトルを立てながら、中身は円高の話。羊頭狗肉も甚だしい。…

円高メリットに目を向けよう:輸入企業の貪りを許すな!

対ドル円相場が90円を突破しそうな勢いである。株安に加えて円高のダブルパンチという声が強い。だが10月16日の本欄で書いたように、円高はマイナスの影響ばかりではない。その理屈は以下のとおりであった。 円高が議論される時、危機感を煽る立場から意識的…

株式市場は景気の先行きを語らない

今朝テレビを見ていたら、記者が株価の暴落に関して取材する中で、「日本経済はどうなってしまうのでしょう」と語る人がいた。また今朝の日経産業新聞では、金融危機 ソニーを直撃」という見出しが踊っている。 声を大にして言いたいのだが、本来的に景気悪…

”贔屓”文化を政治に持ち込むな!

世襲はなぜ悪いのか?という問いかけがある。政界だけではなく、例えば芸事の宗家などでは古来一子相伝ということが言われ、世襲が当たり前ともなっている。中小企業などでも世襲が常識で、息子が継がなければ逆に不思議な顔もされる。一家・一族で営々と築…

読字障害とニューロ経済学:安部公房さんの教訓

少し前になるが10月12日に、NHKスペシャル『病の起源第4集 読字障害〜文字の生んだ病〜』が放送された。読字障害はDyslexiaの訳であり難読症などとも言われる。知能は通常どおりであるのに、文字が読めない病である。脳内で視覚や聴覚、体制感覚を処理す…

大村教授に学ぶ「金融危機の行方」

ご覧になっている方も多いと思うが、日経新聞でこの10月10日から『金融危機と世界−行方を探る』というシリーズを組んでおり、今日が第5回であった。以下筆者と見出しを記す。 第1回(10月10日):林敏彦(放送大学教授)『新たな政策の枠組み急げ 「変化の実…

制度恐慌は万難を排して回避せよ!

株式市場は案の定乱高下を続けている。市場に参加している皆さんには申し訳ないが、このジェットコースター相場に一喜一憂している暇はない。今やらなければならないのは、実態経済への波及を何としても阻止しなければならないということだ。 株価の値下がり…

円高は一方的なマイナス要因ではない

円高がジリジリと進んでおり、そのマイナスの影響が懸念される状況となっている。折りしも今日の日経新聞一面に、これは全て円高の影響ではないにせよ、輸出企業の業績悪化が大々的に報じられ、より危機感が煽られている。 円高になるとステレオタイプ的に「…

景気の先行きを株式市場に聞くな!

14日のNY市場ダウ工業株30種平均は、前日比76.62ドル安の9310.99ドルと小反落となった。場合によってはもう少し乱高下するかと見ていた割には、あまり大きく変動しなかったとの印象である。ただ余談は許さない。今後当面は米国10000ドル、日本10000円ラインを…

やっと一息:でもこれからが正念場

13日のNY市場ダウ工業株30種平均は、9387.61ドルと先週末比で936.42ドルで引けた。こうした地合いを受けて、開いたばかりのわが国の株式市場も反発しているようである。 暴落の連鎖を止めたのは、G7の合意を受けて日米欧の主要国が相次いで危機打開策を打…

経済政策の実効性を問う:それって税金ですよね?

今この時点で「経済政策なんか無駄だからお止めなさい」と書けば、四方八方から袋叩きに会いそうである。でも敢えて勇気を振り絞って書くこととする。私は経済政策とりわけ財政政策をめぐる議論を聞いていて、皆無責任すぎると思っている。 麻生さんも今政府…

堺屋太一さんのご託宣:全治3年は本当ですか?

一昨日の8日は、『早稲田大学グローバルイノベーションフォーラム2008』という御大層なセミナーに参加した。お目当ては堺屋太一さん。「日本と企業の進路」という講演が聞きたかったのだ。堺屋さんは言わずと知れた経済論壇の碩学である。官僚として大阪万…