2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

米信用市場の損失額は最低でも1兆ドル?

今年の3月に米国で発行され一躍ベストセラーとなったC・R・モリス『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』によれば、今般の金融危機における米国信用市場の損失額(デフォルト損失と評価損の合計)は1兆1百万ドルに上るということである。モリスさんは、…

BISの自己資本比率規制を撤廃せよ!

今なりふり構わず金融制度の足枷と懸念されるものの見直しが進められている。時価会計、空売りを始めとして、銀行の自己資本にも見直しが入るという。これは私が一貫して主張して来たように、「制度恐慌」の回避手段として正しい対策であり、歓迎すべきもの…

金融危機を恐慌に繋げないために:米国篇

ご案内のように、J・K・ガルブレイス『大暴落1929(1997年版)』では、株価暴落が大恐慌に繋がった原因が追求されている。株価が暴落しても直接的には景気への関係はないはずであるのに、「株価暴落→大恐慌」という図式がなぜ成立したのかということである…

心理恐慌:マスコミの責任を問う

今朝(10月28日)の読売新聞朝刊の38面に、「株暴落:町工場”廃業の恐怖” OLら外貨両替に列」という見出しが踊っていた。中身を見ると、ほとんど全てが円高の景気への懸念である。株暴落というタイトルを立てながら、中身は円高の話。羊頭狗肉も甚だしい。…

円高メリットに目を向けよう:輸入企業の貪りを許すな!

対ドル円相場が90円を突破しそうな勢いである。株安に加えて円高のダブルパンチという声が強い。だが10月16日の本欄で書いたように、円高はマイナスの影響ばかりではない。その理屈は以下のとおりであった。 円高が議論される時、危機感を煽る立場から意識的…

株式市場は景気の先行きを語らない

今朝テレビを見ていたら、記者が株価の暴落に関して取材する中で、「日本経済はどうなってしまうのでしょう」と語る人がいた。また今朝の日経産業新聞では、金融危機 ソニーを直撃」という見出しが踊っている。 声を大にして言いたいのだが、本来的に景気悪…

”贔屓”文化を政治に持ち込むな!

世襲はなぜ悪いのか?という問いかけがある。政界だけではなく、例えば芸事の宗家などでは古来一子相伝ということが言われ、世襲が当たり前ともなっている。中小企業などでも世襲が常識で、息子が継がなければ逆に不思議な顔もされる。一家・一族で営々と築…

読字障害とニューロ経済学:安部公房さんの教訓

少し前になるが10月12日に、NHKスペシャル『病の起源第4集 読字障害〜文字の生んだ病〜』が放送された。読字障害はDyslexiaの訳であり難読症などとも言われる。知能は通常どおりであるのに、文字が読めない病である。脳内で視覚や聴覚、体制感覚を処理す…

大村教授に学ぶ「金融危機の行方」

ご覧になっている方も多いと思うが、日経新聞でこの10月10日から『金融危機と世界−行方を探る』というシリーズを組んでおり、今日が第5回であった。以下筆者と見出しを記す。 第1回(10月10日):林敏彦(放送大学教授)『新たな政策の枠組み急げ 「変化の実…

制度恐慌は万難を排して回避せよ!

株式市場は案の定乱高下を続けている。市場に参加している皆さんには申し訳ないが、このジェットコースター相場に一喜一憂している暇はない。今やらなければならないのは、実態経済への波及を何としても阻止しなければならないということだ。 株価の値下がり…

円高は一方的なマイナス要因ではない

円高がジリジリと進んでおり、そのマイナスの影響が懸念される状況となっている。折りしも今日の日経新聞一面に、これは全て円高の影響ではないにせよ、輸出企業の業績悪化が大々的に報じられ、より危機感が煽られている。 円高になるとステレオタイプ的に「…

景気の先行きを株式市場に聞くな!

14日のNY市場ダウ工業株30種平均は、前日比76.62ドル安の9310.99ドルと小反落となった。場合によってはもう少し乱高下するかと見ていた割には、あまり大きく変動しなかったとの印象である。ただ余談は許さない。今後当面は米国10000ドル、日本10000円ラインを…

やっと一息:でもこれからが正念場

13日のNY市場ダウ工業株30種平均は、9387.61ドルと先週末比で936.42ドルで引けた。こうした地合いを受けて、開いたばかりのわが国の株式市場も反発しているようである。 暴落の連鎖を止めたのは、G7の合意を受けて日米欧の主要国が相次いで危機打開策を打…

経済政策の実効性を問う:それって税金ですよね?

今この時点で「経済政策なんか無駄だからお止めなさい」と書けば、四方八方から袋叩きに会いそうである。でも敢えて勇気を振り絞って書くこととする。私は経済政策とりわけ財政政策をめぐる議論を聞いていて、皆無責任すぎると思っている。 麻生さんも今政府…

堺屋太一さんのご託宣:全治3年は本当ですか?

一昨日の8日は、『早稲田大学グローバルイノベーションフォーラム2008』という御大層なセミナーに参加した。お目当ては堺屋太一さん。「日本と企業の進路」という講演が聞きたかったのだ。堺屋さんは言わずと知れた経済論壇の碩学である。官僚として大阪万…

金融危機とノーベル賞

今朝起きてびっくりした。下村脩さんがノーベル化学賞を受賞したとの報道に接したからである。 前日南部陽一郎さん、小林誠さん、益川敏英さんのお三方が物理賞を受賞したことを聞いた時に、一度に日本人が三人も受賞するのは何か意図があるのではと思ったの…

止まらない株暴落:ここまで来たら行くところまで行くのでしょう

週明けも株価の暴落は止まらず、NY市場では「ダウ工業株30種平均」の終値が6日9,955.50ドル7日9,447.11ドルと2日連続で1万ドル台割れとなった。一方わが国でもこうしたNY市場の流れを受けて、「日経平均株価」は4日連続で下落。7日の終値が1万155円90銭と1…

緒形拳さんの死を悼む

緒形拳さんが亡くなった。緒形さんは「鬼畜」や「復讐するは我にあり」のような鬼気迫る役柄を演じたかと思えば、「ゲゲゲの鬼太郎」での大妖怪”ぬらりひょん”のような肩の力の抜けた役も演じる。 よく役者さんは役者馬鹿ということが言われ、不器用なのが名…

海外でなければ学べないこととは?:ゲートウェイ21の破産申立に思う

大手留学仲介会社ゲートウェイ21が破産申立をしたことに注目が集まっている。私はこの業態に詳しくないが、いくつか不思議なことがある。 第一は、こうした”単純な”仲介斡旋業者がなぜ経営破綻の危機に瀕したのかということである。必要な経費というのは主…

競争の甘い言葉に騙されるな!

市場原理主義とワンセットで前提とされるのが競争原理である。市場が良好に機能するためには、競争条件が公正・公平に保たれることが必要とされる。 でも基本的に絶対公正・公平な競争条件なんてあるのだろうか? 早い話が世襲。銀のスプーンを咥えて生まれ…

偏った研究手法は不幸のもと−帰納法と演繹法の議論から

ものごとを議論する方法として帰納法と演繹法の二つがあることは言うまでもない。ただ両者ともにそれぞれ長所・短所があり、あまりにも一方に偏りすぎた議論は真実を追究するうえで危険でもあるわけだ。このことはとりわけ社会科学の研究者であれば常識であ…

市場の本質−市場って誰のことか見極めよう!

米議下院議会が、金融機関から公的資金で不良資産を買い取ることを骨子とする”緊急経済安定化法案”を否決したことによって、9月29日のNY”ダウ工業株30種平均”は777ドルの史上最大の下げ幅を記録した。 ところが翌30日には、週末までに同法案が可…

恐慌前夜のこの期に及んで、それでも市場原理主義ですか?(承前)

昨日は日経新聞主催のセミナー『ルールを創る:企業家精神と法』に参加した雑感を書いた。書き足らずに欲求不満が残ったのでもう少し続ける。 再度29日のセミナーにおけるスピーカーのプロフィールを配布されたパンフレットに従って、しつこいかも知れないが…