中島岳志さんに大賛成

東京工大の中島岳志さんが、3月4日付け『論座』で安倍内閣ではコロナ危機を収束できない。今は『石破内閣』しかない」という論文を公表されている。私も中島さんに大賛成である。世論調査では、未だに与党対野党の構図で物事を整理しがちであり、政権与党がいかにいかがわしくても、現行政権に取って代わる野党はないという論法で議論が進められる。だがこの論法自体滅茶苦茶におかしい。

フランスの高級官僚であるミシェル・アルベールは『資本主義対資本主義』という著書をものにし、もはや世界は資本主義対社会主義の対立構図を超えて、資本主義対資本主義に論点が移っていることを指摘した。要は資本主義に多様なヴァリエーションがあるということだ。米国の目下の民主党における大統領候補選において、注目を浴びているバーニー・サンダース氏は左派に分類されることが多い。しかし彼とて、決してアメリカを社会主義国にしたいと、考えているわけではないはずである。彼が左派に仕分けされるのは、飽くまでも資本主義の範疇においてにことであるわけだ。

翻って、石破さんである。彼は中島氏が言うように、この数年の間に随分と変節した。変節というのはマイナスイメージの強い言葉であるが、中島氏の分析では、要は、石破さんの頭の中の理念系がより現実に即したものになったということなのだろう。私も同感である。軍事オタクと揶揄された一昔前の石破さんとは明らかに様子が異なる。単純な市場原理主義の呪縛から逃れ、頑張っても頑張っても浮上できない人々へのフォーカスがより強固になって来た感じが窺がわれるようになっている。これは国民全般にとって好ましいことである。言いたいのは、与党対野党の構図で捉えると、石破さんの影は薄くなってしまうが、安倍対反安倍で考えると、石破さんの印象は一層存在感を増す。

現下の国難は、安倍さんのようなインテリジェンス度の低い人では乗り切ることができない。枝野さんも玉木さんも腹に一物あるかもしれないが、この限りにおいて危機管理内閣を旗印に、敢えて選挙などしなくても、野党と与党の一部が組んで、危機管理内閣をぶち上げたらどうであろうか。きっと、多くの有権者が諸手を挙げて賛同するのではないか。

安倍さんは、宰相としてのみならず政治家としての力量もまことに恥ずかしいものである。かの国のトランプさんとどっこいどっこいである。「こんな人たち」というのは安倍さんの名言であるが、今度は、その返す刀で「こんな内閣」と言われてもおかしくないであろう。こんな総理を7年も戴いたのは、勿論有権者たるわれわれの責任が大きいことは間違いない。しかしそれ以上に、安倍取り巻きの猟官亡者の罪が一等大きいことも間違いない。安倍さん・麻生さんを筆頭に「こんな政治家」に二度と国会の絨毯を踏ませてはならないと言うのはいいすぎであろうか。