I miss 藤山愛一郎さん

 内閣改造が進んでいるようだ。漏れ伝わってくる内定者はまったく新味がなく、一向に興味をそそられない。人気挽回と行くか行かないかは、一目瞭然である。安倍さんは頑張っているのかもしれないが、これはまったくの徒労であろう。
 翻ってこのところ私の頭からは藤山愛一郎さんが離れない。勿論藤山さんとは面識があるわけではない。多少の縁と言えば、30年以上も前のこと。家族で迷い込んだ横浜山手の一角で、瀟洒ではあるが、如何にも朽ち果てそうな藤山愛一郎の表札を掲げた洋館に出くわしたことでしかない。
 ところで、藤山愛一郎さんの名前を知っている方はどれくらいいらっしゃるであろうか? 藤山さんは財界出身の元外相で、総裁選に4度挑むも結局夢は果たされなかった。もともとは藤山財閥の御曹司で、大金持ち。その大金持ちが政界を引退する時には、塀と井戸しか残らなかったと言われている。またそうした様を指して、「絹のハンカチを雑巾に変えた」とも言われる。
 かように政治は金食い虫で、政治家を志すことは身上を潰すものであった。政治家を志す方々にとって「末は大臣を目指す」ことは当然のことかもしれない。だがそうした皆さんは、何のために大臣におなりになりたいのであろうか? 外野席からは、その動機は金と権力以外まったく見えて来ない。モリ、カケ、防衛省等の一連の騒動を見ていて、矢面に立つ政治家先生やお役人諸氏から公に殉じる気概の見えないことが、国民の苛立ちを一層駆り立てる。
 藤山さんのような大金持ちしか、政治家になれないのでは困る。しかし政治家が儲かる商売と考えることは、もっと困るのではないのか? 政治不信の根源は一にそこにある。藤山さんが恋しくなるのもむべなるかなと言えよう。