情報隠蔽で制服組は得するか?

 稲田朋美防衛大臣がやっとお辞めになった。彼女がここまで頑張り続けたのは、なぜなのか? 一説に、政権を守るという強力なミッションを持っていたからだという説もあるが、真相は外野席からはよく分からない。ただはっきりしているのは、特別防衛監察の結果、制服(現場)組により重い罰が課されたということだ。これもなぜなのか?
 この問題で一貫して不思議なのは防衛省に”政治”対”背広”対”制服”の対立構造があるとして、そもそも制服組に「戦闘」の文言隠しをしなければならない鮮明な動機があるのだろうか?ということだ。制服組は文字通り命をかけてPKOに出向いているわけである。陸自トップの岡部俊哉幕僚長も、過酷な現場経験を経て現在の地位についていることは間違いない。命をかけて任務に邁進する集団の紐帯の強さは部外者にも容易に想像がつくであろう。
 日報にあった「戦闘」という文言を消し去ることは、綿々と築かれて来た紐帯=信頼関係を否定し、かつ無用に大事な部下の命を危険に晒すこととなる。にも拘わらず、そうした隠蔽工作を制服組が自ら自発的に行ったとすれば、実に面妖な話である。「戦闘地域へのPKO部隊の派遣が不可」ということであれば、南スーダンからの部隊撤収は速やかに実施されて当然である。これは臆病風に吹かれてという情緒的な事象などでは決してなく、飽くまでも法を遵守すれば撤退という単純な結論が示されるということである。したがってこれは制服組にとって何ら不名誉なことではない。そして繰り返しになるが、隊員が不必要な血を流さないで済む。
 要するに論理的にみて、私にはどうしても制服組が自発的に情報の隠蔽を図ることは考えられないのだ。情報隠蔽で一番得するのは誰か? 安倍総理が稲田さんをなかなか解任出来なかったのは、一連の経緯からみて彼女が一番都合のいい”女”であったということなのであろうか? 隠蔽体質の本丸はどこか? モリ・カケに端を発して次々と明らかにされるこの政権の闇は計り知れない。猛暑襲来の夏であるが、寒気を覚えるのは私だけであろうか?