「モリかカケか」そして喜平

 5月23日付け東京新聞朝刊に、佐藤正明さんが描く三コマ漫画『森友と加計』が掲載された。内容は、安倍さんとおぼしき人物が蕎麦屋に入り、店員が「モリにするかカケにするか」と聞いて来たのに異常反応してやおら店を飛び出すというものである。そして今日27日にはその続きが載っている。前回店を飛び出したその人物が後ろを気にし過ぎて前を注意をしていなかったために、危うく出前の自転車と危うくぶつかりそうになるのだが、その出前の店名が”そば処 喜平”という落ちである。久しぶりに腹を抱えて笑ってしまった。これこそ庶民のエスプリ、矜持である。因みに、店名に驚いた彼はまた脱兎のごとく逃げ出すのである。
 それにつけても、安倍さん不在のなか菅さんの孤軍奮闘は実に醜い。真摯に実態を語る(そういう印象が強い)前文科次官・前川喜平さんに対して、正攻法ではとてもかわしきれないと見るや、大新聞まで動員して人格攻撃で葬り去ろうとしているのだ。仮に前川さんがとんでもない人物であったとしても、真実は真実である。本人は証人喚問に応じると言っているのだから、菅さんが重ねて主張するように潔白であるのなら、野党の要請に素直に応えればいい。安倍さんは野党の追及に対して馬鹿の一つ覚え。「印象操作」のセリフを繰り返すばかりである。しかし前川さんへの人格攻撃こそ「印象操作」以外の何物でもない。二枚舌三枚舌もいいところである。
 安倍さんの強気の拠り所は唯一内閣支持率である。世論は、共謀罪憲法改正などの個々の政策課題については政権を支持しているわけではないのに、内閣支持率だけ異様に高い。なぜこうなってしまうのか誰も明確な解答を示せないでいる。安倍内閣の支持率が仮構の産物であったとしても、確かに表層的には鉄壁の岩盤構造に見える。ただこのまま次回の選挙でも安倍政権は支持され続けるのであろうか。森友問題でも明らかになったように、親安倍対反安倍の対立軸は、保守対革新、右翼対左翼、改憲対護憲などという思想・信条に関わる高尚な対立構造では決してなく、達観すれば根源的な人間の品性に関わる問題と言っていい。今回の前川問題ではその感をより強くする。国民はもう具に政権の実体を見極めていると思われるのだが…。
 内閣の懲りない強弁ぶりを目の当たりにするにつけ、無力感が高じるのは事実である。しかし”美しい日本”の国民としての誇りを取り戻すためにも、このままでいいはずはない。安倍内閣が岩盤規制を無理矢理ドリルでこじ開けた”故事”に倣って、如何に固い岩盤であっても、われわれは不公正・不公平の誹りを招いている現政権を支持し続けることは如何にもまずい。孫・子、そしてそのあとに続く次世代のためにも。