興味深かったアカデミー賞授賞式

 アカデミー賞授賞式をリアルタイムで見ていた。最後の最後。作品賞の発表には本当に驚いた。下馬評高い”ラ・ラ・ランド”の受賞ということで一旦プレゼンテーションされたものが、三人目の喜びのスピーチの最中に訂正が入り、結局は”ムーンライト”が正しい受賞作品ということになってしまったのだ。私は”ラ・ラ・ランド”も”ムーンライト”も両方とも見ていないので、何とも言えないが、とにかく受賞の取り違えは前代未聞の出来事であった。
 もともとハリウッドの俳優陣は政治的信条を明確にする者が多い。今回のアカデミー賞においても、予めトランプさんとメリル・ストリープさんのバトルがとりわけ喧伝され、そもそも最初から雲行きが怪しかった。そこに今回の作品賞取り違え事件。憶測が憶測を呼んでいる。昨年の同賞受賞は主演男優賞のレオナルド・デカプリオさんをはじめとして、受賞者および受賞作品はことごとく白人オンリーであった。
 それが今回の受賞主要部門では、ちょうど白人関係と黒人関係と受賞が二分している。ハリウッド俳優の皆さんはリベラルの旗手が多いとして、それはそれで構わないのかもしれない。しかし白人映画の”ラ・ラ・ランド”が黒人映画の”ムーンライト”に土壇場でとって変わったのだとしたら、トランプさんを笑ってはいられないでのはないか。これはアフォーマティブ・アクションに代表される逆差別ではなかったのではなかろうか。そうであるとすれば、”ムーンライト”の関係者も浮かばれない。
 今回のアカデミー賞授賞式はとてつもない醜態を曝け出したわけである。このことはエンターティメントが必要以上に政治と関わると、本来的な意義が損なわれるという好例であるように思われる。映画ファンの大多数は思想信条よりは、純粋に映画を楽しみたいということであろう。ここに政治が持ち込まれれば、只管シラケてしまう。