トランプ勝利は考えたら当たり前?

 トランプさんが予想に反して当選した。この結果について今朝の読売新聞では、「米国でこんなに怒りや不満を抱え、"疎外"されていた人が多かったのか、と驚くばかりである」と、論評されていた。私はこの論評にこそまったく「驚くばかり」であった。優秀なアメリカウオッチャーや特派員を多数抱えながら、大きな地殻変動が見抜けなかったということがである。驚く前に、もって不明を辱じるべきであろう。
 私は米国国民がこうした大反乱起こしたそもそもは、無条件での市場原理主義への屈服に端を発していると考えている。その顕著な綻びがリーマンショックであったにも拘わらず、ことを起こした張本人はうやむやのうちに逃げ切り、犠牲になり馬鹿を見たのは力のない一般庶民という結果。米国では戦後も暫く"大恐慌"のトラウマが拭い切れなかった、ということである。そうした意味で、米国民の心の中には、リーマンショックという第二の大恐慌がトラウマになって根深く凝っており、その凝りがトランプ勝利をもたらしたということでないのだろうか。そう考えると、今回の結果は少しも不思議なことではなくなる。
 ただ米国民にとって今回不幸だったのは、「トランプかクリントンか」という選択肢しかなかったことである。反体制のシンボルとしてトランプさんを担いだのであろうが、市場原理主義の産業的基盤は、金融と不動産の二つである。ここではこれ以上触れないが、金融業界不動産業ともに有り体に言って虚業である。信頼に足りうる国家経営の基盤となりうる存在では決してない。トランプさんは不動産王。成功した経営者ではあるが、彼は虚業家。米国民はまた騙されるのであろうか。民主党クリントンさんではなく、サンダースさんを担げばまた局面が異なったであろうが、すべて後の祭りである。
 よその国のことはひとまず置くとして、問題はわが日本である。小泉ー竹中コンビが亜流市場原理主義を導入して以来、格差は明らかに拡大した。安倍ー浜田ラインは基本的にその路線の継承者である。その歪みは身の回りでも確実に地殻変動を起こしつつある。残念ながら、安倍さんの目には高支持率の陰に隠れて見えないようであるが、政権が引っくり返るような地下エネルギーは確実に蓄えられている、と見るのが妥当である。安倍さんのパフォーマンスには、選挙で勝ち続け少しでも延命を図る。彼の政権運営スタンスは、極めて形而下的な稚技にすぎる。このままでいいはずがない。