北海道:B級グルメでいいじゃないか

 8月の末から9月の頭にかけて妻と2人で北海道に出掛けた。旅程としてはまず稚内に飛んで2泊し、宗谷岬等最北端の地を探索。利尻にも渡った。ただ台風前夜の悪天候で、楽しみにしていた名物の夕焼けや利尻富士の展望がきかずに大変残念であった。次には列車で下り旭川を経由して、富良野へ。ここでは新富良野プリンスに1泊した。ホテル敷地内の倉本聰氏のテレビドラマの舞台となった風のガーデンやSoh’s Barなどをミーちゃんハーちゃん宜しく満喫。そして次いでこれも列車の移動で帯広へ。帯広では2泊した。絵のモチーフを求めて車を飛ばしつつ、北の田園風景を堪能。最後に札幌へ。これも列車で移動して2泊した。札幌では小用があり、何人かの人と面談・会食。今回の北海道旅行は結構移動距離が多く、その移動はほとんどが列車利用であった。
 全行程7泊8日の旅であったが、7泊中リゾート(シティ?)ホテルの利用は新富良野プリンスの1泊のみで、あとは基本的にビジネスホテルを利用した。予算の都合も勿論あるが、ビジネスホテルの利用はわれわれ夫婦の旅行スタイルに合っている。特に最近のお気に入りはドーミーインで、今回は稚内で利用した。私は出張にも極力同ホテルチェーンを使うことにしており、これまで札幌、福岡、甲府などで利用している。ドーミーインのサービスは機能性に徹し、過不足ない心地よさが何よりも評価される。夕食はサービスされないが、朝食は地の食材がふんだんに使われ総じて美味。そして極めつけは、ほとんどのチェーンが天然温泉大浴場を持っていることである。海外のラグジュアリーホテルも随分泊まり歩いたが、私には、折角の立派なホテルも十分に使いこなすことが出来ずに所詮は宝の持ち腐れであった。いっそドーミーイン程度のサービスが性にあっているということである。
 食事は居酒屋、屋台、ホテルのレストラン、デパ地下など色々試してみたが、素材はやはり一級で、特に野菜が雑味がないうえにとても甘く美味であった。今回初めて生でも食べられるというピュアホワイトなるとうもろこしにもチャレンジしたが、糖度が高く想像以上に美味しかったことは新鮮な驚きであった。北海道は海の幸、山の幸どれをとっても食材が豊富で美味い。そうした素材に付加価値をつけるべく、料理、菓子、酒類、乳製品、飲料など様々な場面で加工・開発が競われ、成果も出ている。だが例えば菓子ひとつとっても、値段をさて置けば、東京や京都や神戸には美味しいものがいくらでもある。
 東京などの菓子が美味しいのは歴史の積み重ねによるところが大きいわけで、所詮後発の北海道ではどうしゃっちょこ立ちしても敵わない。にも拘らず、真っ向勝負を挑むものが増えている。フロンティアスピリットは尊重しよう。だが北海道人は時として身の程知らずに突っ走ることが多い。一歩間違えば無謀な話になりかねないのである。ある有名製菓メーカーは北海道の土産物市場を席捲し、東京の街中でもその土産物袋を日に何度も見るほどである。これは大成功の例である。しかしながら前述したように、この程度の品質の菓子は東京にはいくらでもある。飽くまでもエキゾティシズムに駆られて購入するにすぎない。これが東京のデパートや通販で簡単に買えるようになれば、その末路は明らかである。要は悪乗りしすぎるなということである。
 私の偏見に対して、札幌で会った大学の先生やコンサル会社副社長も賛意を表してくれた。われわれの結論は、北海道の食は素材第一の「B級グルメ」でいいじゃないかということであった。それが、これからも北海道の名産として長く愛される秘訣ではないかということなのだ。時の運に悪乗りすることなく、自らの立ち位置を冷静に見つめたうえで戦略を展開すべきであろうと思う。北海道人はどうもそこのところを疎かにする傾向があるため、老婆心ながらご注進ということである。