国家議員は自ら議員歳費を半額とせよ

 一部報道によると、今回総選挙で当選した先生方に、8月分の議員歳費約230万円(文書交通費100万円を含む)がまるまる支給されるのだそうである。これをやらずぶんだくりといわずに何と言うのであろうか。心ある先生がたは須らく全額返上すべきである。ただし困ったことには好事魔多し。返上すれば公職選挙法199条に引っかかってしまうのだそうだ。だがこれは本当か? どなたか本当に引っかかるのかどうか、実際に返上してみたら如何だろう。よしんば摘発されたとしても国民は拍手喝采。国民挙って応援団に回ることは間違いない。とまれ、このやらずぶんだくりは総額11億円に上るということだ。民主党が本気で財源探しをするのだとすれば、まず隗より始めよ。こうした返上を率先してやることだ。自民党だって民主党に先駆けてこれをやれば、また国民の見る目も違ってくるだろう。こんな非道が罷り通ってよいはずがない。常識が通らないことはやはりおかしいということだ。先生がたしっかりしてくださいな。ほんまに頼んまっせ。
 このことの本質は、そもそも議員歳費のあり方に繋がってくるということである。私はとにもかくにも国会議員にカネがかかりすぎると思っている。国民の「痛み痛み」と言うのなら、まず全国会議員は歳費の半額を自主返上することを強く提案したい。これを与党となった民主党の先生方が是非率先しておやりになって頂きたいわけだ。1/2には根拠がある。ひとつは、一般会計予算の半分を借金(国債)に頼らなければならない構造となっていることであり、今ひとつが、『天地人』の直江兼続が関が原後の上杉藩の減封に際して、自身も6万石から3万石への減封としたことである。先生がたには国家百年の計を期して、兼続に肖るべきではないかということを申し上げたいわけだ。
 一般議員の月給は137.5万円で、この他にそれぞれ毎月文書交通費100万円、立法調査費65万円が支払われる。これらに公務出張の交通費実費、年間ボーナス718万円等を加算すると、ここまでで年間4400万円。さらに、三人の公設秘書の人件費として年合計2000万円を加えると、議員1人当たりに歳費として支払われる年間総額は6400万円になる。その他に、議員宿舎の恩典や政党助成金の分配もあるわけだ。
 こうした高禄を食みながら、国民の痛みなどとはまったく片腹痛い。この6400万円を半額にせよということである。自公政権の無駄遣いを追及する前に、これは是非ともやるべきことである。6400万円に衆参両院議員総数722人を掛けると、ざっと460億円で、その半分は230億円である。この金額が多いか少ないかは別にして、シンボルとしての意味は実に大きい。これを諸政策に先駆けて実施すれば、国民はマニフェスト違反など笑って許してしまうだろう。なぜ先生がたは、そうした民意をお汲み取りにならないのであろうか。
 歳費のうち個人的所得は2300万円を超える。この半分でも1100万円を上回る。世帯平均所得が6〜700万円とすれば、これでも一般国民の年収の2倍近い。因みに皆さんと同志の河村たかし名古屋市長は、市長になってそれまでの2300万円の報酬を800万円に自らカットしておられる。私は800万円とまでは言わない。半額にされたいと言っているにすぎない。報酬が低すぎると文句を言うのであれば、政治家などにおなりにならなければよい。今の時代である。これだけの報酬を得られるのであれば、高い志操をもった優秀な選良候補はいくらでもいる。
 個人的経験から言って2000万円を超えるような年収を手にしても、それに麻痺してしまえば少しも多いとは感じない。否それよりも何よりも、自分がそれだけの年収を得ることの“不思議さ”を感じなかったことに、それを失ってしまった今となっては逆に怖さを感じる。月々200万の月給を得れば実働20日で日給は10万円である。貧乏人の性であろうか。10万円の日給など怖くて、今ではとても貰う気がしない。これは政治家先生だけでなく、財界のお歴々にも言える話だ。ヒトとして生まれて、最低限のモラルの話である。
 文書交通費、立法調査費だって月額165万円も本当に必要であるのか。別途政党助成金があるわけだ。個人的な政治活動など高が知れている。立法調査は政党助成金の中でおやりになればよいのではないか。私が地方に勤務していたとき、何人かの政治家先生とお付き合いがあった。金帰月来の先生もおられたが、地元に帰って立法調査をするわけではない。冠婚葬祭・集会への出席など、選挙区対策がもっぱらである。今回落選した大物先生の中には、毎週ソフトボールをおやりにお帰りになる先生もおられた。
 はっきり言おう。文書交通費などはほとんどが税金を使った自らの選挙対策費用である。政治家個人の選挙対策のために、なぜ税金が使われなければならないのか。これも長年の慣習で感覚が麻痺してしまっているから自浄作用が起きないのだ。立法調査や文書交通費などは一括して予め支払うのではなく、必要であれば、その都度必要理由を付して申請し、領収書をもって経費清算をすれば済む話ではないか。サラリーマンは皆これをやっている。
 また秘書も公設秘書が3人も必要であろうか。第1秘書、第2秘書は多分地元との関係を整理すれば2人も必要ではないであろうし、政策担当秘書なども、1議員に1人必要であるはずがない。さらに言えば、今回新人で当選した多くの先生方に、弁護士・公認会計士レベルの能力が要求される政策秘書は絶対に使いこなせない。加えて政策立案は個人プレーでは効果が薄いことは明らかだ。政策の議論は政党内の機関でやればよい。これは政党助成金の範囲で充分出来ることではないのか。過去にも秘書給与の着服などの不祥事もあった。ピンハネ出来るということは、必要ないということである。少なくとも、これが既得権益化していることはおかしいし、これにメスを入れない新政権はもっとおかしい。