三笠フーズさん、いきなり解雇は酷すぎやしませんか?

事故米偽装で世間を騒がせている三笠フーズが早々と全従業員を解雇した。ミートホープ船場吉兆などいくつの会社が食品偽装に端を発して潰れ、いったい何人の従業員から職場を奪って来たであろうか? やるせない気分である。
こうした会社の社長は一様にワンマンである。社内に従業員が意見具申する雰囲気など全くなかったはずである。
ある金融機関では就職出向する場合、「オーナー会社には行くな」が合言葉と聞く。勿論全てとは言わないが、オーナー会社の社長は概してワンマンであり、会社の風通しは極めて悪い。一族一党を重用しすぎもする。
こうした会社ではパワハラもまかり通る。「馬鹿野郎」「死んでしまえ」「嫌なら辞めちまえ」。人格を深く傷つける言葉が浴びせかけられ、時には本当に蹴飛ばされたりもする。
一方9月1日付日経産業新聞では恒例の『働きやすい会社2008』が発表された。ランキング1位には5年ぶりにNECが返り咲いたのだそうである。この調査ではランキングが大きく変動するのが常態化しており、働きやすい会社が年によってこんなに変わるのかとやや眉唾のところもあるが、大手企業において従業員の人格を大切にし、職場環境の改善に目が向けられていることは間違いない。
無論大企業だけがよくて、中小企業が皆悪いわけではない。証券トップ会社の某支店で「支店長が副支店長に灰皿を投げつけた」事件について直接目撃した人間から話を聞いたこともある。ただこれは昔々の話である。
中小企業でも、コンプライアンスCSRなどが意識され、随分と職場環境は改善されて来ているであろう。しかしながら食品偽装を演出した経営者たちを見る限り、彼らにそうした意識が浸透しているとはとても思われない。これは決して氷山の一角ではない。多分中小企業ならず、新興企業においてもそうした雰囲気は強いであろう。
大企業と中小企業の格差は賃金とか労働時間とか計数値で議論されるのが、一般的である。勿論そうした計数面での格差是正を図ることは大事である。だが「働きやすい環境」という指標はより大きな意味を持っている。大きく表面化しないまでも、理不尽な経営者に涙を呑んでいる従業員は沢山いるはずである。
結局そうした経営者が不法行為や道義に反する行為に走った結果として、従業員が職を失うのでは踏んだり蹴ったりである。何のために今まで我慢して来たのか。
一連の食品偽装事件からの教訓は斯種事件の再発を防ぐためには、やはり内部告発が有効ということである。ただこの場合告発者を解雇出来ないという縛りだけでは不十分である。会社が潰れてしまっては元も子もないからである。
船場吉兆の時に思ったのであるが、従業員によるM&A(EBO)が早い段階で実施されていれば、最悪潰れることはなかったであろうし、新しい経営体制の中で、少なくとも雇用と暖簾は守られたはずである。
今回の三笠フーズ事件ではいきなり解雇という手段がとられたわけであるが、従業員による再建という選択肢だってあったはずである。無能無謀な経営者に仕えた代償は如何にも大きすぎる。