科学技術関係費−第二の公共事業費化の懸念

9月1日付日刊工業新聞によると、2009年度の科学技術関係費の概算要求額は、政府全体で前年度予算費14.3%増の4兆818億円になったということだ。このうち文科省分が同13.4%増の2兆6,283億円。これは全体に対する比率が64.3%と過半数を占めている。
文科省の予算はほとんどが大学で消化されるものであろう。東京大の玉井克哉教授らの研究によると、大学における科学技術予算は、特定大規模大学に集中的に配分されるために使い残しが生じ、第二の公共事業費化が懸念される状況にあるということである。
また平沼赳夫経産相(当時)の肝煎りで始められた「大学発ベンチャー1,000社計画」は既に実績として1,500社を超え、一見順調である。しかしその実態は玉石混交の状態にあって、単なる数稼ぎとの見方も強い。
わが国の政策は全てとは言わないが、最近打ち出されるものはことごとく空振りである。そもそも消化能力のないところに予算投入すれば、その結果は容易に想像がつく。無駄遣いと、不要な事業のでっちあげである。
われわれは公共事業、農業、中小企業など、その先例を嫌と言うほど見て来たはずだ。予算は必要である。使うべき分野は沢山ある。
問題なのは一部政治家や役人の思いつきで、充分な事前評価することなく政策が採用されてしまうことである。採用した政策の事後評価はカッコつきであっても一応実施される。しかしながら本当に大事なのは事前評価である。
一旦予算がつけばそれを死守し、さらに増加を目論むのが役人の性である。したがって本当に予算化してよいか悪いかの事前評価をきっちり行なわなければ、まだぞろ財政赤字の蟻地獄が始まってしまう。
事前評価は国会での議論がその役割を担う。だが国会での議論は与党が数の論理で押し切ってしまうのが常態である。また対する野党も政局化のために国会を利用しているとしか思えない行動ばかりが目立つ。これはまさに惨状である。
今回の総合経済対策には、公明党の強い主張を入れる形で定額減税が織り込まれた。庶民の立場では嬉しいことである。しかしその効果と後日の負担を考えると、手放しでは喜べないことは言うまでもない。ここにまともな政策論議はないからである。
それにしても、国会というところは党利党略を離れ、個人の選挙対策を離れて、なぜ是々非々の議論が出来ないのであろうか。そういう選良しか選べない国民の限界ということであろうか。