短期的な経済対策は必要か?

29日政府は事業規模は11.7兆円に上る総合経済対策を決定した。財政支出いわゆる真水部分は2兆円で、赤字国債は発行しないと言う。
わが国のGDPは500兆円、財政予算80兆円から見て、金額的には評価出来るものである。事業規模が全て実現すれば、単純計算でGDPを2%押し上げることとなる。こうした中で問題は①事業規模が目論見どおりに実現するかどうかということと、②これが起爆剤となって成長軌道に乗ることが出来るかどうかということである。
①が実現されたとしても、②がうまく行かなければ財政支出は死に金となってしまう。借金が残るだけである(建設国債でも同じ)。
バブル崩壊以降の経済対策はことごとく空振りである。金融政策が景気刺激に発動出来ない一方で、財政政策も赤字制約が強い中ではいた仕方ない面も多い。
しかしながらより大きな問題は、如何に大型の経済対策を打ち出しても、それが従来と異なって自律回復の呼び水とならなくなってしまっていることである。
自律回復が見られなくなったのは、不確実性が高まっていることの要因が大きい。これを意識して今回の経済対策には、冠に「安心実現のための」ということがわざわざ謳われている。方向感は正しい。
だがその中身たるや散々である。羊頭狗肉とはまさにこのことである。私は日本国民が安心して経済活動に臨むためには、①雇用の安心、②医療の安心、③年金の安心、④食料の安心、⑤エネルギーの安心の5つの安心が保障されなければならないと考える。
これらは短期的な対策とは一線を画する形で骨太に構築されなければならない。効果の期待できない短期の対策に徒にエネルギーを費やすのではなく、中長期的観点から安心実現に取り組む。今求められているのはそのことである。急がば回れということであろう。