高級料亭セーフ・回転寿司アウト

 連日の舛添報道にはもううんざりだ。舛添さんは昔から嫌いである。しかし好き嫌いは別にして、社会の公器たるマスコミがこんなことに血道をあげていいものであろうか。一方で破額の公費出張が糾弾され、その返す刀で今度は彼の”せこさ”をあげつらう。恥じることなくサミット期間中も追及の手は止まなかった。
 政治資金で家族の旅費・飲食代・日用品代を賄うことはいけないことであろう。だがもともと政治資金の費消については曖昧な部分が多く、政治家が「これは政治資金だ」と言えば、政治資金で通ってしまう性格のものだとすれば、舛添問題は氷山の一角なのであろう。語るに落ちる兵庫県の号泣議員の記憶も新しい。
 世界が称賛してやまないホセ・ムヒカウルグアイ大統領。愛車は87年製のビートルで、生活費は月千ドル。一国の大統領らしからぬ生活ぶりが”世界で一番貧しい大統領”として脚光を浴びた。しかし公費流用疑惑から離れて、生活ぶりだけに着目すれば、「せこい。一国の大統領としてふさわしくない」と批判されてもおかしくない。ただこれを舛添さんが言うように、”せこい”ではなく”節約”と言い換えれば、また印象が変わって来る。
 昔から「政治にはカネがかかるものだ」と、政治家先生は仰る。安倍さんも日常の会合は、よく高級料亭や高級レストラン・ホテルを利用されるようだ。例えば彼が料亭でカネ使う場合、総理としての立場、自民党総裁としての立場、一議員としての立場、私人としての立場が使い分けられなければならない。だが、この使い分けは実務的にはかなり困難であろう。
 民間企業で接待費を使う場合、必ず接待の相手先を書かなければならない。しかしながら政治資金の場合、どこそこの料亭で誰それと会合を持ったなどと正直に書けないであろうし、そもそも誰それとの部分は記さなくていいのであろう。とすれば、女性と料亭で密会したとしても、当の本人が「これは政治活動だ」と言ってしまえば通ってしまう。そもそもがそんな代物である。
 舛添問題は極論すれば、「高級料亭セーフ・回転寿司アウト」ということではないのだろうか。高級料亭で例え私利私欲のための会合が持たれたとしても、これはセーフで、舛添さんが節約に節約を重ねた結果、事務所経費に子供のパンツ代を紛れ込ませたのがアウトというのでは、何か腑に落ちない。
 阿波(徳島)弁で”せこい”は関西弁での”しんどい”という意味を持つ。車に弱い娘がタクシーの中で具合悪くなり、運転手さんに「せこいんか?」と言われて、同乗していた家内は「私たち何せこいことしたのかしら」と考え込んだという笑い話がある。舛添さんは今さぞかし”せこい”状況におありのことでしょう。それもこれも身から出た錆。ここは耐えることしかないでしょう。
 それにしてもこんな些事ををまるで鬼の首を取ったかのように連日連夜報道するマスコミ。こんな姿勢であるから、新聞離れ・テレビ離れがますます加速してしまう。政治離れもそうであるが、馬鹿にしてやまない一般大衆は倦んでいるいるのである。