麻生内閣にノブレス・オブリージュの期待

 麻生内閣が船出した。この内閣への私の関心は唯一その”世襲度”である。
 9月3日の本欄で『世論力テレビweb』の引用で、自民党の二世・三世議員等の数が過半数を超えていることを書いた。
 その延長線で麻生内閣世襲度を知らべてみて驚いた。ここでの世襲は祖父・父親が県議等を含めて何らかの地盤を引き継いでいる者としているが、何とこの数が18人の閣僚中13人を占めているのである。
 しかもこの中でお祖父さん、お父さんが総理大臣の地位にあった人が、麻生総理を含めて4人。また同様にお祖父さん、お父さんが閣僚経験者、有名議員である人が5人。加えると全閣僚中の半分がお祖父さん、お父さんが総理大臣もしくは閣僚であった人なのである。
つまり大臣になるためには、お祖父さん、お父さんが有力政治家でなければならないということである。
 世襲は一概に悪いことばかりではないとも思う。ただこれだけ大挙して二世・三世が政治家を目指すとすれば、その裏に何か甘い汁あるのではと勘繰られても仕方がない。
 それと政治家に限らず、二世・三世となるとその能力が問われることが多くなる。これは中小企業の世襲を見れば一目瞭然である。「三代目は身上潰す」である。
 企業は”私”のものである。そこに勤めている人の不運に目をつぶれば、潰れるものは潰れて仕方がない。だが政治は言うまでもなく”公”のものである。日本国が潰れてしまっては困る。
特権(=甘い汁)はある意味必要悪であり、これがあるために人は頑張る部分がある。
 問題は特権が特定の人の間で独占・盥回しにされてしまうことである。階層間の流動性が閉ざされる中で、政治的特権が一部のファミりーに独占されてしまうことである。
 小渕優子さんに個人的恨みつらみはないが、恵三さんの娘さんでなければ、この若さで閣僚にはなれなかったことは間違いない。これが特権ということだ。
 麻生内閣の第一の仕事は経済対策ということである。だが今の状況にカネをいくら注ぎ込んでも焼け石に水であろう。特権が独占される様を見て、国民はこうした階層の固定化に夢を失っている。これが全てとは言わないが、国民の元気を相当部分奪っているのは間違いない。
 この閉塞状況を抜け出すためには、二世・三世議員は総引退しなければならないということだ。小泉改革が未だ過大評価されている。小泉改革って何だったのであろうか? 郵政民営化小泉改革なのであろうか?
 小泉さんの貢献は「自民党をぶっ壊せ」の掛け声宜しく、結局解党寸前まで追い込んだことに止まると言ってよい。郵政民営化の政策などは余分であったし、安易に市場原理主義を持ち込んだ罪は大きい。
 小泉さんは本当に自民党をぶっ壊し、その足で全ての世襲議員を引きずり込んで、政界を引退すればよかった。そうすれば小泉さんは政治史に残る大政治家の名をほしいままにしたことであろう。
 少し話がそれた。麻生さんも同じである。こんな簡単なことがなぜお分かりにならないのだろうか?
 百歩譲って世襲議員の皆さんが政治家を続けたいというのなら、その覚悟を示して欲しい。そのキーワードはノブレス・オブリージュである。
 決して口先だけでなく、地位や名誉、場合によっては命を投げ出すことがあっても、国家と国民のために奉仕する。その姿勢が政治家先生に見られれば、国民は四の五の言わない。安倍さんや福田さんで懲りてはいるが、やることさえやってくれればよい。特権には目をつぶろう。
 特権とノブレス・オブリージュはワンセットである。特権ばかりを享受して、あとは政局に明け暮れるばかりの日常が我慢ならないのだ。
 麻生内閣の皆さん、世襲議員の皆さん、皆さんには本当の意味でのノブレス・オブリージュを期待しています。それじゃなければ国民は浮かばれません。